アメリカの給与計算(ペイロール)事情について

給与計算

国が変われば給与計算も変わるということで、今回はアメリカの給与計算事情について書いてみたいと思います。

アメリカでの給与計算(ペイロール)は外注 or 内製?

ある統計によると、アメリカの法人約40%が給与計算業務を外注しているようです。つまり、残りの約60%は社内で処理をしているということになります。

アメリカの給与計算業務は非常に煩雑ですので、この統計を見た時に不思議に感じましたが、アメリカの99.9%の企業がSmall businessであることを考えると自然なのかもしれません。

実際、従業員が5人くらいであればなんとかできなくない気もしますが、かなり面倒くさいのではないかなと思います。

給与計算で必要な手続き等を見ていきたいと思います。

アメリカでの給与計算業務に必要な主な手続き

月次の納税

給与を支給するたびに源泉徴収を行い、連邦・州政府等に納税を行う必要があります。全員同じ州内にいれば特に問題はありませんが、いくつかの州に従業員がいる場合は各政府に納税を行う必要があります。

また、所得税だけでなく雇用保険税も納める必要があります。

給与の支給が月次のみであれば月一回の処理ですが、アメリカではBi-weekly(二週に一回の支給)が多いですので月二回行う必要があります。

また、アメリカは源泉徴収分の納税が遅れると、すぐに当局からNoticeが発行されます。Noticeへの対応で多くの時間を浪費することになってしまうので、納税については細心の注意が必要です。

レポートの提出

いくら給与を従業員に支払い納税を行ったかを、四半期ごとに各政府に報告する必要があります。このレポートを提出しない場合、罰則が設けられていますので必ず提出が必要になります。

また、一年が終わった段階で年次のレポートも提出する必要があります。

支給レートや控除の設定

各従業員の支給レートや控除の設定を行う必要があります。従業員によっては養育費の支払を設定する必要があったりしますので、従業員の数が増えると管理が大変になります。

また、401KなどのBenefitを設定している場合は、各Benefitの管理も必要になります。

給与の振込手続き

ひと昔前であれば小切手での支払が一般的だったかもしれませんが、現在は銀行振込が主流になっています。従って、各従業員の振込先銀行口座を管理する必要があります。

給与明細の作成

従業員にいくら払って、いくら控除したのかを伝える給与明細も都度作成する必要があります。

Form W2(源泉徴収票に相当)の作成

一年間が終わった後に、Form W2という書類を作成し従業員に渡す必要があります。また、同時にForm W3という政府に提出するレポートも作成する必要があります。

税率の変更等

日本ではあまり税率の変更は起こりませんが、アメリカでは頻繁に税率の変更があります。(特に州税)

毎年、各州の税率や新たな税の設定等が発生しますので、全てを把握しておく必要があります。

結論

アメリカの給与計算業務ではこのような作業が必要となりますので、自社で行うとかなり作業負荷が高いものになります。

従って、自社で専門の人を雇用し給与計算を行うのは、かなり費用が高くなるかと思います。

そこでアメリカの多くの法人は、給与計算業務をアウトソースして業務負担を減らしています。

もちろんアウトソースを行っても、自社で管理は必要ですが各作業からは解放されますので大幅な時間の節約にはなると思います。

費用は従業員の規模やBenefitの設定等によって大きく変わりますが、統計によると平均一従業員あたり年間約$200と言われています。

既にアメリカに進出済みの日系企業でアウトソースしていない会社は少ないと思いますが、もし、アウトソースしておらず業務負荷が高いことが課題になっている場合はアウトソースを検討してみるのも良いかもしれません。

これは日本の給与計算業務も同じ事ですが、一人の担当者が長年処理していると作業が属人化してしまい退職等があった場合にトラブルになることも考えられます。

トラブルが発生し、現地の従業員への給与支払が遅れるなんてことがあったらとんでもないことになると思います。

業務を整理しアウトソースすることによって、予め考えられるトラブルを未然に防ぐことが可能になると思います。

特にアメリカは人材の流動が激しく転職が盛んです。せっかく業務を覚えたと思ったら転職されたという事も多く発生しますので、アウトソースは良いリスクヘッジかもしれません。

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