昨今、日本では年金がもらえるのか、もらえないのか等の議論が盛んになっています。
海外に駐在として派遣される現役の方も、自分の年金がどうなってしまうのかは気になるトピックではないでしょうか。
今回は駐在期間中の年金保険について書いてみたいと思います。
日本の年金制度は所謂二階建て方式になっており、「国民年金」と「厚生年金」で構成されています。
会社員の方は「厚生年金」に加入することになるので、毎月のお給料から厚生年金保険料が天引きされています。ちなみに天引きされた同額を会社は国に支払っています。
厚生年金保険の料率は現在労使併せて18.3%となっています。(上限あり)
日本の企業からの派遣でアメリカに駐在する方は、原則厚生年金に引き続き加入することになります。
一方アメリカにも年金制度は存在しています。
アメリカでは”Social Security”と呼ばれ、アメリカで働く人は給与からSocial Security taxが控除されています。
Social Securityの税率は現在労使併せて12.4%となっています。(上限あり)
日本からアメリカに派遣される駐在員も本来であれば、Social Security taxを支払う必要があるわけです。
しかし日本とアメリカの間には「日米社会保障協定」という条約が締結されており、簡単に言うと「日本とアメリカのどちらかで年金保険料を支払っていれば、両方の国で払う必要がないよ。」という内容になっています。
従って、きちんと日米社会保障協定の手続きをしている会社の駐在員は、アメリカでSocial Security taxが免除となります。
日米社会保障協定の手続きについては、日本年金機構のホームページに詳細が記載されています。派遣前に申請が必要となりますので、出国前に手続きを行うようにしてください。
日米社会保障協定の手続きが完了し「適用証明書」が発行されましたら、アメリカの給与計算担当者に「この駐在員はFICA tax (Social Security taxとMedicare tax)は免除です。」と伝えてあげてください。
何も連絡が無いと駐在員の給与計算に詳しく無い方は、他のアメリカの現地従業員と同様に源泉徴収処理を行ってしまう可能性が高いです。
実際アメリカの多くの給与計算業務担当者は、社会保障協定の事など知らない人がほとんどだと思います。
実務上あまり多くはありませんが、たまに適用証明書の期限を超えてアメリカでの駐在を継続される方がいらっしゃいます。適用証明書は延長申請も可能ですので、期限を超えそうな場合は忘れずに日本年金機構に対して延長申請を行ってください。
延長された期間を超えてなおアメリカでの駐在を継続する場合は、適用証明書の期限が切れたところからFICA tax (Social Security taxとMedicare)の徴収が必要となります。
年金制度については日米共に非常に複雑なものなので、がんばって簡潔に書いてみました。企業年金など他にも触れなければいけないものもありますが、わかりやすさに重きをおいているのであらかじめご了承いただければ幸いです。
年金については、今後も触れていきたいと思います。