年末になり、いよいよ確定申告の季節が近づいてきましたね。
我々は12月の怒涛の給与計算を乗り越えて、更にここから申告書の季節となるので今が一番嫌な季節になります。(笑)
多くの在米日本人は「確定申告かぁ。だるいなぁ。日本の年末調整は楽だったなぁ。なんでこんなもんあんだよ。普段の仕事で忙しいんだよ。」とぼやいているのではないでしょうか。
(私もクライアントの申告書を作るのは仕事なので何も問題ないのですが、自分の申告書を作るのは本当にめんどくさいと思っています。ここだけの話ですが。)
さて、なんとなくアメリカでは日本と違って毎年確定申告しなければいけないと理解している方がほとんどだと思いますが、今日はアメリカで確定申告を行わないと実際どうなるかを考えてみたいと思います。
それでは、まず実際申告書を提出しなければならない条件を確認してみましょう。
申告書提出義務者
実はアメリカにいる人全員が、確定申告をしなければいけない訳ではありません。一年間(通常1月1日から12月31日の暦年)で一定の金額未満の収入の場合は、確定申告の必要はありません。
この基準の金額は以下の通りとなっています。
婚姻ステータス | Standard deduction amounts |
独身者又は夫婦個別 | $12,950 |
夫婦合算 | $25,900 |
Head of household(寡婦) | $19,400 |
こちらの金額はStandard deduction(標準控除)と呼ばれるものになります。このStandard deductionは各納税者が収入から控除できるものになります。
(注:65歳以上の方や視覚に障がいをお持ちの方は金額が異なります。
参考:https://www.irs.gov/newsroom/irs-provides-tax-inflation-adjustments-for-tax-year-2022)
この金額以上の収入があった場合は、確定申告の提出が必要になります。
申告書を提出しないとIRSは何をするか?
本来申告書を提出すべき人が提出しなかった場合、IRSはいくつかの手段を行使してきます。まず、ペナルティや利子税を課してきます。更に何もしないと、財産の差し押さえや刑事告訴といった手段を取ることもあります。
申告書を期限までに提出しなかった場合は、”Failure to File Penalty”という延滞税が課され、未払いの税金に対し毎月5%課されることになります。この延滞税は最大未払い税金の25%となります。
IRSに申告書を提出していなくても、アメリカで働いている場合はIRS側で給与所得を確認することが可能です。給与所得があるにも関わらず申告書が出ていない場合は、すぐにNoticeが発行されることになると思います。
(申告書や手紙の処理は信じられないくらい遅いですが、Noticeの発行は驚くほど速いです。)
正しく給与計算が行われている会社の駐在員は、IRSに給与所得の情報がありますので申告書を提出しないと春先にNoticeを受け取ることになるでしょう。
「俺は日本人で日本の企業に働いているんだから、体はアメリカにいようとも申告書は出さん!」というストロングスタイルの方はさすがにいないと思いますが、ただでさえ高い税金にPenaltyが課されたり、財産差し押さえの対応をしなければいけなくなったりと非常に面倒なことになるので法に則り申告書は提出するようにしましょう。最悪の場合、逮捕されてしまい日本に帰れなくなるかもしれません。
また、現在アメリカの居住者がアメリカ国外に一定の金融資産を持っている場合、毎年当局へ報告が必要になります。
(こちらはまた別の記事で取り上げたいと思います。)
こちらの金融資産の報告を行わない場合、非常に高額のPenaltyが課される可能性もあります。アメリカでの駐在をがんばったにも関わらず、最悪今まで貯めてきた多くのお金が召し上げられる可能性も無くは無いので、報告義務のあるものはきちんと報告しておいた方が良いと思います。
申告書を遅れて提出した場合はどうなるのか?
たまに慌ててお問い合わせをいただく事があるのですが、とりあえず落ち着いていただきたいと思います。
申告書を遅れて提出したとしても、さすがのアメリカも命までは取りません。一旦深呼吸をお願いします。
申告書を遅れて提出する場合ですが、追徴がある場合と還付の場合で異なります。
追徴の場合、納税後に当局から利子税が計算され、納付の案内が郵送されます。こちらの案内に従って、納付すれば完了になります。
還付の場合、過去三年分まで還付請求をすることができます。還付の場合は早めに申告をすることをお勧めします。
まとめ
余計なトラブルや出費を避けるためには、申告書は毎年期限までに提出したほうが良いでしょう。このトラブル対応は解決まで時間がかかりますし、本当に面倒です。ただえさえ忙しい皆さんの時間を浪費することになります。
会計士や弁護士に対応を依頼すると、費用が更にかかります。
また駐在員の場合、ただでさえ高い税コストが更に高くなる可能性があります。日本と違うことも多いのでとまどうこともあるかと思いますが、アメリカでは申告書を提出する必要があることを理解しておきましょう。
(専門外になりますが、ビザの更新で申告書の控えを要求されることも多いようです。ビザの更新時にも必要となりますので、いずれにせよ申告が必要ということかもしれません。)
「どうして申告しなきゃならんのだ!」や「申告しなくても大丈夫っしょ。」と思われていた方々の参考になれば幸いです。