駐在員の給与高いなぁと思った時に読む記事(グロスアップについて)

給与計算

国際人事のお仕事を最近始められた方や、アメリカに派遣されていきなり駐在員のペイロールや申告書の管理をすることになった方々が最初に思うことの一つに「駐在員の給与高くない???」ということがあると思います。

駐在員の方からも「私、こんなに給料もらってません!」という問い合わせが来たりもします。

(私に言われてもどうしようも無いのですが・・・。)

アメリカに来ることによって駐在員の年収が自動的に爆上がりする訳ではなく、各種手当等によって給与の額が上がるロジックについて書いていきたいと思います。

駐在員の給与は、ほぼ全員「手取り保障」という形態で給与が決められています。

(会社によって規定が異なりますので、あくまで一般的な考え方について記述します。)

簡単に言うと「赴任地での税金は会社が負担するので、手取り額は決められた額を支給しますね。」という決まりです。

アメリカで働くと、原則給与に対してアメリカで課税されます。これは、日本で支払を受けていてもアメリカで課税されます。

このアメリカでの税金を会社が負担することによって、駐在員の給与は決められた金額を支給されることになります。この会社が駐在員の税金を負担する手当を「グロスアップ手当」と呼びます。

グロスアップの計算イメージは下記の通りです。

給与: 100

税率: 20%

グロスアップ無し

給与:100

税金:20

手取り:80

グロスアップ手当有り

給与:100

グロスアップ手当:25

課税所得:125

税金:25

手取り:100

この計算例では非常に簡単な条件でしたが、実際には連邦所得税・州税・地方税等が発生するので計算はかなり複雑になります。

それでは、日本の手取り額を考えてから、同じ給与水準でアメリカでの手取り額を考えたいと思います。その後、駐在員のグロスアップ手当を考えてどのくらい収入額に差があるかと見ていきたいと思います。

  1. 日本での手取り額

試算の前提

  1. 年齢35歳(介護保険無し)
  2. 東京都在住
  3. 配偶者の所得は無し
  4. 扶養親族はお子様(10歳)1名
  5. 年収700万円
  6. 医療費控除やふるさと納税等の各種控除無し

年収が700万円の場合、所得税は235,900円・住民税341,100円・社会保険料1,053,900円となりました。税金と社会保険料を合計すると1,630,900円となり、手取り額は5,369,100円となります。

注)健康保険料は、勤務している会社が加入している健康保険組合によって健康保険料率が異なるため、実際には社会保険料の金額に差異が発生することが考えられます。

この試算は日本でお仕事をされている方であれば、馴染みのある計算かと思います。

こうやって改めて数字を見てみると、結構な金額を税金と社会保険料で支払っていますね。この金額で車は買える気がします。

  1. アメリカでの手取り額

試算の前提

  1. 年齢35歳
  2. イリノイ州在住
  3. 配偶者の所得は無し
  4. 扶養親族はお子様(10歳)1名
  5. 年収70,000ドル
  6. 医療費控除や401K等の各種控除無し

年収が70,000ドルの場合、Federal income taxは$1,894(Child tax credit $3,000適用後)・FICA Taxは$3,373.65・Illinois income taxは$1,947となりました。

アメリカは健康保険料が会社で加入するプランによって大きく異なるので、一か月$500で試算をしました。

税金と健康保険料を合計すると$13,215.65となり、手取り額は$56,784.35となります。

注)アメリカは州によって、所得税が全く異なります。一例としてカリフォルニア州では高い州税が課されますが、テキサス州やワシントン州では州の所得税はありません。

  1. 駐在員のグロスアップ額

試算の前提

  1. 年齢35歳
  2. イリノイ州に派遣
  3. 配偶者の所得は無し
  4. 扶養親族はお子様(10歳)1名
  5. 手取り保障での年収70,000ドル
  6. 医療費控除や401K等の各種控除無し

手取り額を$70,000と設定した場合、Federal income taxのグロスアップ手当額は$5,883となります。また、Illinois income taxのグロスアップ手当は$2,356となります。

従って、グロスアップ手当の合計は$8,239となります。

駐在員の総所得は手取り額とグロスアップ手当を合計した金額となりますので、$78,239が総所得額となります。

単純に$70,000の給与所得と比較すると、総所得額が約10%増加することになります。

今回は単純な計算例を用いて試算してみましたが、現実ではグロスアップ手当以外に家賃や各種手当が課税所得として含まれるため更に総所得は大きくなることになります。

また、アメリカでは日本と同様に累進税率を採用しているため、課税所得が大きくなればなるほどグロスアップ手当も大きくなることになります。

「駐在員の給与高くない!?」となる理由ですが、上記の通りグロスアップ手当が大きな理由の一つになっています。

こちらの記事が新しく国際人事のお仕事を始められた方や、自分はこんなにもらってないはずなのに給与の数字が高いなぁと思われていた駐在員の方のお役に立てば幸いです。

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