前回はアメリカと日本での給与支給のスケジュールの違い等をまとめてみました。
今回は源泉税や実際の処理方法などについて、まとめてみたいと思います。
基礎の基礎を学んでいきましょう
源泉税(Withholding taxes)
給与から控除される税金を源泉税と呼びます。源泉税は日本でもアメリカでも存在しています。
日本の場合
ちなみに日本では給与支給時に、原則以下のものが皆さんの給与から控除されています。
- 所得税
- 住民税
- 厚生年金
- 健康保険 + 介護保険
- 雇用保険
ここ最近ではサラリーマン増税の話題をよく目にしますので、今後ますます給与所得者の税または社会保険料負担が増えるかもしれませんね。
アメリカの場合
アメリカでも給与支給時に税金等が控除されます。以下のものが一般的なものになります。
- Federal income tax
- Social Security tax
- Medicare tax
- State income tax
- Local income tax
アメリカに来て間もない方は何が何だかわからないと思いますので、一つずつ見ていきたいと思います。
Federal income tax
連邦に収める税金をFederal income taxと呼びます。
Federal income taxは源泉税の中でも、一番大きな割合を占める税金になるかと思います。Federal income taxの計算方法はIRSによって定められています。
計算式は、給与支給スケジュールと各従業員の給与支給スケジュールによって変わってきます。
(参考:https://www.irs.gov/publications/p15t)
実務上、自身で税額を計算することはありません。通常、会社が契約しているペイロールベンダーを通して処理を行うため、ペイロールベンダーが自動で計算を行い処理を行います。
Social Security tax
Social Securityは米国政府が運営する社会保障制度になります。各給与支給時にSocial Security taxを納める必要があります。
Social Security taxは労使折半になっており、税率は6.2%(労使併せて12.4%)となっております。また、所得の上限が決められており、2023年は$160,200が上限となっております。
なお、日本からの駐在員は通常「日米社会保障協定」により、アメリカでSocial Security taxを支払う必要がありません。ただし、適用証明の期限が切れた場合は、Social Security taxを支払うことになります。
Medicare tax
Medicareは米国政府が運営する65歳以上の高齢者と障碍者のための健康保険になります。各給与支給時にMedicare taxを納める必要があります。
Medicare taxも労使折半になっており、税率は1.45%(労使併せて2.9%)となっております。こちらは所得の上限はありません。
また、$200,000を超える場合は、追加で0.9%のAdditional Medicare taxを納める必要があります。
なお、Medicare taxも「日米社会保障協定」により日本からの駐在員は通常納める必要がありません。
State income tax
アメリカでは連邦の個人所得税だけではなく、州の個人所得税があります。州の所得税についても、各給与支給時に源泉徴収を行う必要があります。
ただし、いくつかの州では州の個人所得税がありません。テキサス州などでは個人の所得税がないため、州税の源泉徴収は必要ありません。
Local income tax
一部地域ではLocal income taxを課しているところもあります。代表的な地域としてはオハイオ州になります。オハイオ州ではState income taxとLocal income taxとは別にSchool taxと呼ばれる税金がある地域もあります。
会社が展開している地域でLocal income tax等が無いか、一度確認をしておくことをお勧めいたします。
Federal & State Unemployment insurance
従業員には負担義務はありませんが、雇用者のみにUnemployment insuranceが課せられています。
連邦と州それぞれunemployment insuranceがあり、納付する義務があります。
給与支給処理
給与計算の概要が分かったところで、実際の処理の流れを見ていきたいと思います。
色々と税金について見てきましたが、実際に自身でそれぞれを計算するわけではありません。ほぼ全ての企業はペイロールベンダーを使用し、給与計算処理を行っています。
ペイロールベンダーでは、税額の計算、各政府への納付、従業員への支払い等を代行してくれます。
一般的な給与計算処理の流れは以下のようになります。
- 支給対象者の確認
- 支給金額の決定
- ペイロールベンダーへの入力
- Previewレポートの確認
- 最終処理
会社によってはペイロールの担当者がおらず、会計事務所に外注しているところも多いかと思います。
社内での処理を行う場合、「2.支給金額の決定」は駐在員分については結構時間を取られてしまうことが少なくありません。本来行うべき業務に集中するためにも、外注できるものは外注したほうが良いと考えます。
給与支給後の処理
四半期ごとに連邦政府や州政府に申告書の提出が必要となります。こちらの申告書では四半期ごとの給与支給額や源泉徴収税額を申告します。
ペイロールベンダーを使用している場合は、ペイロールベンダーが作成し各政府へ提出を行います。
給与明細は各ペイロールベンダーが作成し、各従業員にWeb経由で共有しているところがほとんどになります。
一部在米日系企業では、日本語の明細を別途作成し各駐在員に共有している会社もあります。ペイロールベンダーによっては、メモ機能を使用し詳細を表示することも可能ですので、日本語の明細を作成する手間を省くことも可能です。
給与計算処理以外に明細の作成や共有で時間を要してしまっている場合は、効率的な方法がありますのでぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
今回はアメリカの給与計算で必ず目にする税金等についてまとめてみました。
実際に計算を行う必要はありませんが、どのような税金があるか知っておいて損はないと思います。