水原一平被告の”Signing False Tax Return”について

確定申告

日本・アメリカで大きく報道されている水原一平被告の新たな情報が発表されました。

United States Attorney’s OfficeのPress releaseによると、水原被告が大谷選手の銀行口座から$17 millionの違法送金と虚偽申告へのサインを認めたそうです。

Orange County Man Agrees to Plead Guilty to Illegally Transferring Nearly Million from MLB Star’s Account and Signing False Tax Return
A Japanese-language interpreter has agreed to plead guilty to federal criminal charges for illegally transferring almost...

ただの凡人である私からすると「$17 millionも取っちゃうなんてすごいなぁ。大変だなぁ。オオタニさん、これに気が付かないなんて本当に野球しか興味ないんだろうなぁ。」くらいの感想しか出てこないのですが、”Signing False Tax Return”という記述に「おぉ!」と体が反応してしまいました。

税金を専門に扱う人間の悲しい性が出てしまった気がします。

今回はこの事件から、税金に関連することについて考えてみたいと思います。

なぜに”Signing False Tax Return”???

他人の口座からお金を勝手に送金することは洋の東西を問わず立派な犯罪行為だと思いますが、今回「虚偽の確定申告とわかっていながら申告書にサインをした」罪が含まれています。

情報によると、2022年の確定申告で$4.1 million(約6億1,500万円)の所得が他にあることを認識していながら、$136,865を所得として申告書を作成しサインしたとして水原被告は罪に問われています。

この$4.1 millionという金額は大谷選手の口座からの違法送金かと思いますが、犯罪による収入もきちんと報告しないといけないということですね。

ちなみにIRSが作成しているPublication 17には、しっかりと犯罪による収益も確定申告で報告しなければいけない旨が記載されています。せっかくなので少し見てみましょう。

Publication 17(報告すべき収入について)

IRSのPublication 17はここで見ることができます。

Publication 17 (2023), Your Federal Income Tax | Internal Revenue Service

こちらのPublication 17に記載のある”Other Income”の欄に、色々な種類の収入が記載されているのですが興味深い項目を見ていきましょう。

・Illegal activities(違法行為)

Income from illegal activities, such as money from dealing illegal drugs, must be included in your income on Schedule 1 (Form 1040), line 8z, or Schedule C (Form 1040) if from your self-employment activity.

(訳)違法薬物等の取引行為による収入はSchedule 1のLine 8z、または自営業の場合Schedule Cで報告しなければいけません。

・Stolen property(盗んだもの)

If you steal property, you must report its fair market value in your income in the year you steal it unless you return it to its rightful owner in the same year.

(訳)もしあなたが盗みを働いた場合は、盗んだものを適切な持ち主に返却しない限り、盗んだものを市場価格で報告しなければいけません。

・Bribes(賄賂)

if you receive a bribe, include it in your income

(訳)もし賄賂を受け取ったら、収入に含めましょう。

「盗んだりするような人がきちんと報告するわけないじゃん・・・」と思いますが、一応法律ではそのように決まっているのですね。

いないことを心から願いますが、もしこの記事を読んでいる人で上記の収入がある人はきちんと申告してください。

水原被告のケースでは”Stolen property”に該当すると判断されたものと考えられます。

今回2022年の申告のみが対象のようですが、2023年の申告については逮捕されたのが2024年3月だったため、2023年の申告期限(4/15/2024)に間に合ったからでしょうか。

そうすると、2023年の申告書では大谷選手の口座から違法に送金した金額を含めた申告書を提出したのかもしれません。仮に事実だとすると追徴がとんでもないことになっていそうな気がしますが・・・。

日本でも同じようなことが・・・

先日日本でも、「頂き女子りりちゃん」こと渡邊真衣被告が所得税法違反の罪で起訴されました。

1億5,000万円をだまし取って得た所得を申告せず、4,000万円を脱税したとして所得税法違反の罪で起訴されています。

「頂き女子“りりちゃん”」所得税法違反の罪で起訴|NHK 東海のニュース
【NHK】SNS上で「頂き女子」を自称し、男性に恋愛感情を抱かせて合わせて1億5000万円余りをだまし取ったなどとして詐欺などの罪に問われている25…

この事件でも詐欺で得た所得を申告していなかったため、脱税で起訴されてしまいました。犯罪収益を自ら申告するような人はいないと思いますが、金額が大きいと脱税の罪への影響も大きくなるようです。

まとめ

日本でもアメリカでも犯罪による収益は確定申告が必要です。違法取引に手を染めている人も、きちんと毎年申告しましょう。

・・・というか犯罪はやめましょう。まっとうに生きるのが一番です。

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