アメリカの寄付金控除について

確定申告

駐在員の皆様や人事・経理ご担当者様からよくいただく質問に対して、短時間で読めて、実務に役立つ記事シリーズを始めます。

第一回は「アメリカの寄付金控除」についてです。

なぜか「アメリカの手取り」の記事が非常によく読まれているので、今後もそうした長めの記事も時折発信していく予定です。

寄付金控除とは?

日本では「ふるさと納税」に代表されるように、寄付金控除は多くの方にとって身近な節税手段です。

ふるさと納税だけでなく、災害等が発生した際に多くの方が赤十字等と通じて寄付を行い、確定申告書で寄付金控除を取ることができます。寄付金控除を取ると、寄付を行った年の税額を抑えることができるようになります。

課税当局に認められている団体に寄付を行うと、税金を抑えられるのは日本もアメリカも実は同じです。

アメリカでの「寄付金控除」

アメリカにも寄付金控除があるのですが、仕組みが少し複雑になっています。

寄付金控除を理解するために、まずアメリカの確定申告書上での”Standard Deduction(標準控除)”と”Itemized Deduction(項目別控除)”の違いを押さえる必要があります。

Standard Deduction or Itemized Deduction

日本もアメリカも収入全額に対して、税金が計算されるわけではありません。

日本で会社員として給与がある場合、「給与所得控除」という控除があり、一定の計算式に従って控除額が計算されます。

そして、給与から計算された控除額や基礎控除等が引かれて課税所得が計算されます。

アメリカの場合、給与、年金や投資の収入等を併せた金額から”Standard Deduction”又は”Itemized Deduction”の金額を控除することができます。

“Standard Deduction”は申告形態(単身者・夫婦合算等)により金額が決められており、納税者は一定の金額を控除することができます。

(2025年では、夫婦合算は$30,000の控除を取ることができます。金額は毎年インフレ率により調整されます。)

一方、”Itemized Deduction”では納税者の支出額によって控除額が決まります。税法により認められた一年間の支出額が”Standard Deduction”を上回る場合、計算されたItemized Deductionの金額を収入から控除することができます。

Itemized Deductionは納税者が実際に支出した医療費、州税・地方税(上限あり)、住宅ローン利息、寄付金等を合算して控除します。

2025年を例に考えると、2025年中の控除可能な医療費や州税、寄付金等の合計が$30,000を超えた場合、Standard DeductionではなくItemized Deductionを適用することになります。

寄付金控除を受けるには?

上記の通り、寄付金控除を受けるということは「Itemized Deductionを適用する」ということになります。

既婚者の場合、Standard Deductionが$30,000ですので、$30,000を超える支出が必要になります。

現在、州税・地方税の控除には$10,000の上限が定められているため、実務上Itemized Deductionを適用するケースは限られています。

私が昔日本で行っていたような数万円程度の寄付では、アメリカの確定申告書で寄付金控除につながらないことが多いというのが実務上の感覚です。

まとめ

アメリカの駐在期間中に、アメリカで寄付をすること自体は大変素晴らしいことだと思います。

しかし、日本と異なり、控除を受けるためには相応の寄付額が必要である点は、ぜひ覚えておいていただきたいポイントです。

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