トランプ関税と赤沢大臣の出張から考える「短期滞在者免税」

確定申告

いわゆる「トランプ関税」について、世界中が大変な騒ぎになっています。

先日、とある大手会計事務所のパートナーの話を聞く機会があったのですが、関税を担当するチームは各国からの相談で手一杯とのこと。

つまり、相当儲かっているようです。

さて、日本からは赤沢経済再生担当大臣が頻繁に渡米し、大統領や閣僚たちと厳しい交渉にあたっているとのニュースをよく目にします。

一部ネット民からは「マイル修行か?」「ファーストで移動してんじゃねー」といった心無い声も見かけましたが、相手が相手だけにタフな交渉です。

私としてはファーストで移動しても全然いいのでは?と思うのですが…。

ちなみに、ANAのワシントンD.C.便はボーイング787が使用されていて、そもそもファーストクラスの設定がありません。

B787はANAが世界初のローンチカスタマーで、日本企業も多く製造に携わっている非常に優れた航空機です。

「ファーストで移動してんじゃねー」とディスる前に、せめて使用機材くらい調べてほしいですね。(眼鏡クイッ)

赤沢大臣の訪米日数とアメリカ課税の可能性

そんな赤沢大臣の渡米ニュースを見ていると、人の移動に関する税金を専門とする私としては、つい気になってしまいました。

「大臣、アメリカの税金大丈夫かな?」

完全に余計なお世話ですが、赤沢大臣のX(旧Twitter)を確認してみると、2025年4月以降だけで少なくとも8回、合計24日ほどアメリカに滞在しているようです。

(帰国の報告がされていなかったので、一回の渡米で三日滞在したと仮定しています。)

ただ結論から言えば、国会議員は日米租税条約第18条によりアメリカで課税されません。
よって赤沢大臣がForm 1040NRを提出する必要はありません。

(もちろん、突然議員を辞職して米国に移住するなら話は別ですが。)

会社員が同じ日程で出張した場合は?【短期滞在者免税】

では、もし普通の会社員Aさんが同じスケジュールで出張していたらどうなるでしょうか。

答えは「短期滞在者免税」にあります。

短期滞在者免税とは?【日米租税条約のポイント】

租税条約では、二国間で税金の取り決めを行っています。利子や配当、事業所得の扱いなどに加え、短期出張者の給与についても規定があります。

目的はシンプルで、相互に人材を行き来させやすくし、貿易や投資を促進するためです。

日本企業からの出張者で特に多いのは、タイやアメリカでしょうか。日本とタイの租税条約、日本とアメリカの租税条約では短期滞在者免税の日数は以下の通り規定されています。

  • 日タイ租税条約:暦年中180日以内の滞在なら免税
  • 日米租税条約:いずれの12か月の期間で183日以内なら免税

日米の場合は「いずれの12か月」なので、年をまたぐ出張は要注意です。

出張シナリオで確認する免税可否

例:Aさんが2024年と2025年にそれぞれ92日アメリカに出張した場合

  • 2024年:92日
  • 2025年:92日

暦年ごとならどちらも183日未満なのでセーフに見えますが…

「いずれの12か月で合計183日以内」で考えると、この出張日数では、2024年と2025年それぞれでアメリカの確定申告が必要となります

つまり、単に「183日以内だから大丈夫」と思い込むと痛い目を見るのです。

出張者が注意すべき3つのポイント

短期滞在者免税は便利ですが、条件は「日数」だけではありません。

1. 滞在日数の数え方

  • 入国日・出国日もカウント対象
  • 休日やオフ日も含まれる

2. 給与・費用負担者の確認

  • 免税の大前提は「滞在先国で給与が負担されていないこと」
  • アメリカ子会社が給与の一部や出張費を負担している場合、短期滞在者免税は使えません。
  • 出張手当や日当が現地法人経由で支払われると、免税規定の適用外になるケースもあります。

3. 通算日数に注意

  • 出張を何度も繰り返すと、合算で183日を超えるリスク

HR担当者向けチェックリスト|短期滞在者免税の実務確認

出張者をアメリカへ派遣する際に、短期滞在者免税が適用できるかを判断するための確認項目です。

滞在日数の確認

  • いかなる12か月間でも 183日以内 であるか?
  • 入国日・出国日・休日も含めて正しくカウントしているか?

給与負担の確認

  • 給与は 日本本社からのみ支払われているか?
  • アメリカ子会社や現地法人が一部でも負担していないか?
  • 出張手当・日当・現地支給経費の有無を確認しているか?

雇用関係の確認

  • 出張中も雇用契約は日本本社にあり続けているか?
  • 現地法人との雇用契約を新たに締結していないか?

業務内容の確認

  • 出張目的はプロジェクト支援や会議参加など一時的なものか?
  • アメリカ子会社の通常業務に組み込まれていないか?

記録・証拠の準備

  • 渡航日程や旅程表を社内で一元管理しているか?
  • 給与の負担元を示す書類を保存しているか?

まとめ|駐在員・出張者の税務リスクを防ぐために

赤沢大臣のような政治家は租税条約で保護されていますが、普通の会社員Aさんが同じスケジュールで渡米していたら、アメリカの税務申告義務が発生する可能性があります。

特に注意すべきは「給与や費用の負担元」です。
滞在日数が183日以内であっても、アメリカ法人が給与や出張費を負担していると免税の対象外となり、米国課税が発生します。

出張や駐在の多い方、または企業の人事・経理担当者は、この「短期滞在者免税」のルールをきちんと理解しておくことが大切です。

国際税務は“日数カウントゲーム”のように思われがちですが、実際は「誰が給与を払っているか」「どの期間を区切って考えるか」といった落とし穴が潜んでいます。

不安な場合は、専門家に相談するのが一番確実です。


✈️ 最後に一言。
ファーストクラスで移動しても課税関係は変わりませんので、安心してご搭乗ください(笑)

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