私事ですが、この秋から大学院に通い始めました。アメリカの税務についてもっと学びたいと思い、Master of Science in Taxationのコースにて勉強を開始しました。
この秋のセメスターでは”Tax Research”という授業を履修しており、いくつもの税法や判例を読まされています。課題も多く大変ではありますが、何とか卒業できるようにがんばりたいと思います。
今日はおもしろい(?)判例を紹介します!
俺は”Individual”じゃない!”Citizen”や! (Sanders v. Commissioner)
色々と判例を読んできたのですが、ここ最近で一番興味深かったのは”Sanders v. Commissioner (No. 14986-19., T.C. Memo 2023-71, 2023 BL 203081 Court Opinoin)”という税務裁判の判例になります。
この裁判は、2009年から2016年まで全く申告せず納税していなかったSandersさんとIRSとの闘いになります。
Sandersさんは金や銀のブローカー業を生業とし、コンサル料として自身が売却した会社から対象期間中合計$3,492,526(日本円で約506,416,000円 1ドル145円換算)を受け取っていました。
しかし、Sandersさんは「俺は”Citizen”ではあるが、税法に記載のある”Individual”ではない。」という正直よくわからない理由で税金を払っていませんでした。
そんなSandersさんに対し、IRSは調査を開始し、未払いの税金並びにペナルティーを併せて$1,566,802(日本円で約227,186,000円 1ドル145円換算)を請求しました。
ここからは裁判所での闘いとなります。
裁判所は無慈悲です
“Citizen” or “Individual”??
判決でSandersさんの主張はことごとく裁判官に論破されてしまいます。(ちなみにこの裁判はU.S. Tax Courtで行われており、このU.S. Tax Courtの裁判官は全員税法の専門家になります。)
§7701に”Individual”と書いてあるじゃないか!
私は”Citizen”だから税金の対象にならない!
そういった主調は過去に何度も裁判で否定されてますよ。
確かに、Sandersさんの主張する通り§7701(a)(1)には”person”は”individual”であると定義されています。また、「他の項目では”citizen”と”individual”が併記されているので、”citizen”と記載されていない以上税金の対象にはならない。」と主張されています。
しかしながら、このような主張は過去に何度も否認されています。また、Regulationには下記のように記載されています。
” define an individual subject to tax as any individual who is a citizen or resident of the United States.”
“Citizen”はアメリカで生まれた人又は帰化した人となっているので、アメリカ生まれのSandersさんも”citizen”として税金の対象になるということですね。
その他の言い訳としては、「どこに申告書を提出すればよいかIRSは発表していないじゃないか!」とも言っていたようですが、もちろん発表されているので却下されています。
Penalty
Sandersさんは長いこと無申告でしたので、当然ながらIRSからPenaltyが課されることになります。
申告をしなければいけないことを知っていながら、申告をしていない場合はPenaltyが重くなります。また、IRSの調査時に資料の提出等に協力していたか等もPenaltyの決定時に考慮されることになります。
判決文によると、Sandersさんはなんと一度も資料を自分で提出しなかったようです。
また、コンサル料の支払い時に$10,000以下の小切手で払うように指示をしており、記録が残らないようにしていた形跡がありました。(こちらは会社の記録から判明したようです。)
明らかに見つからないようにしていたため、Penaltyもしっかり払わなければいけなくなってしまいました。
こうして、漢Sandersさんの闘いは無慈悲にも敗れてしまったのでした。
最後に
とてもアメリカらしい判例だなと思ったので、今回シェアをさせていただきました。
やはり屁理屈をこねても税金は取られてしまうのですね。
実際、この後Sandersさんが賦課された税金とPenaltyを支払ったかはわかりませんでした。(払わなければ資産を差し押さえされるので、払ったとは思いますが・・・。)
きちんと払うものは払わないといけないということですね!また何か興味深い判例がありましたら紹介させていただきます。
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